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谷川俊太郎さんの、詩の朗読を聴いた。

すごく、よかった。

ふいに圧倒的なちからで救われたような気がした。

たくさんの詩、たくさんの言葉。
DiVaの音楽に乗って、そして朗読で。

なにもかも美しかったのだけれど、
特に
“誰にもせかされずに”
が、心に響きました。

以下引用します。

◆ ◆ ◆

誰にもせかされずに
谷川 俊太郎

誰にもせかされずに私は死にたい
そよかぜが窓から草木の香りを運んでくる
大気がなんでもない日々の物音を包んでいる できたらそんな場所で
もう鼻はその香りをかげないとしても
もう耳はもっとも身近な者の嘆きしか聞けないとしても

誰にもせかされずに私は死にたい
愛し続けた音楽のように心臓をリタルダンドさせてやりたい
宴のあとのまどろみのようにゆっくりと夜へ入ってゆきたい
もう脳が考えることをやめたあとも
考える以上のことがまだ私のどこかにとどまっているかもしれないから

それは私が自分を惜しむからではない
死のひんやりとした指に手首をつかまれた人々の
あのはらわたのよじれるような不安とあがきを感じないからではない
私はただこころとからだをひとつに運命に従いたいだけ
野生の生きものたちの教えにならって ひとりで

誰にもせかされずに死にたいから
誰にもせかされずに私は死にたい
丸ごとのただひとつのいのちのままで私は死にたい
限りあるいのちを信じるから 限りあるいのちを慈しむから
今も そして死のときも

誰にもせかされずに私は死にたい
扉の外で待つ者が私をどこへ連れ去るとしても
それはもうこの地上ではないだろう
生きている人々のうちにひそやかに私は残りたい
目に見えぬものとして 手で触れることの出来ぬものとして

◆ ◆ ◆



知らず、涙が出て、とまらなかった。

すごく知りたかったことが、そこにはあった。

私はそしてたぶん、泣きたかったのだ。
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by yukotakada-work | 2012-10-21 23:09 | Comments(0)

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